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「Q-Day」 構造エンジニアが考えるなら?


構造エンジニアが、河川に架かる車両通行用の新しい橋を設計するプロジェクトを割り当てられたとします。まず初めに、橋が荷重に耐えられるだけの強度を持つためには、どのようにすればよいかを調べる必要があるでしょう。そこで、彼らは高速道路局の交通管理者のところに行き、予想される最大荷重はどれくらいかを尋ねます。交通管理者はこう言うかもしれません。


「そうですね、橋に積める最大の荷物はフル装備のセミトラクター・トレーラー4台で、1台の重量は8万ポンド。そのため、橋にかかる可能性のある最大荷重は32万ポンドということになります」


それを聞いて構造エンジニア何をどう考えるでしょうか?不測の事態を考慮して、64万ポンドの荷重に耐えられる安全率を考慮して橋を設計するかもしれません。ハリケーンと地震の両方が同時に発生しているときに、橋の上に4台のトラクター・トレーラーがあったらどうだろうか? など、エンジニアは、どんな状況でも橋が落ちないよう合理的な範疇で最悪のケースを考えます


私たちは将来の量子コンピュータが、今日の古典的な公開鍵暗号に脅威をもたらすことをすでに認識しています。


昨年12月、ミケーレ・モスカ博士とマルコ・ピアニ博士が執筆した2022 Quantum Threat Timeline Report(2022年量子脅威タイムラインレポート)と題する優れた分析がGRI(Global Risk Institute)から発表されました。


彼らは量子の専門家40人を対象に、RSA-2048を24時間以内に破る(Q-Day)ためには、2,048ビットの数字を因数分解できる量子コンピューターがいつ利用可能になると思うかについて世論調査を行いました。結果はばらつきがあったものの、ほぼ全員が今後10年以内には起こらないと感じており、20年以上かかると答えた人もいます。可能性が最も高い年月の平均は、2035年以降ということになりました。


しかし、あなたが企業のCIO(最高情報責任者)またはCSO(最高セキュリティ責任者)でしたら、私たちが推奨するのは、上記の例で説明した構造エンジニアのように考えることです。最も可能性の高い年月に基づいて計画するのではなく、合理的であり最悪のケースの場合に基づいて計画することをお勧めしたいのです。


そしてGQIの提案は、いかなる状況下でも量子暗号解読に対する組織のデータの安全性を完全に確保するために、2027年を「REASONABLE WORST CASE(最悪の場合)」として考えることです。


予期せぬブラックスワンの出来事に備えるためには、こう考えることが合理的だと考えています。ヒューリスティックアルゴリズム、スケーリングが予想よりも速く進行することを可能にする革新的な量子アーキテクチャ、主要な国家が開発を加速する「マンハッタン」スタイルのプロジェクト、または他の現在誰の予測にもない新しいイノベーションを考慮する必要があります。


GQIは「Quantum Safe '23 Outlook Report」と題して、量子コンピュータがもたらす暗号の脅威と、その脅威に対抗するための様々な活動について詳しく解説したレポートを執筆しました。このレポートの詳細と入手方法については、こちらのウェブページをご覧ください。



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オリジナル記事:Quantum Computing Report

https://quantumcomputingreport.com/

翻訳:Hideki Hayashi

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