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コラム:IBM、ノイズを切り裂く。潜在的なインパクトは?

by David Shaw, GQI


IBMは、NISQ デバイスが有用となるだろうと考える人々にとって、刺激的な新しい結果を発表しました。このニュースは量子コンピューティングのコミュニティを興奮させるでしょう。また、一部の人々にとっては混乱をまねくかもしれません。


IBMは、Eagle R3プロセッサを使用して、127Q(量子)回路をゲート深さ60層まで効果的に実行することを実証しました。この結果は『Nature』誌に掲載され、量子デバイスが、現在利用可能な古典的な代替手段の能力をどれだけ超えているかを示しています。さらに、この結果は、将来の物質科学への応用を示唆するものとして、多くの科学者に感銘を与えるタイプの問題(2次元横磁場イジングモデルの時間発展)において達成されたことに意味があるといえます。IBMは、これが「量子的優位性」であるとは主張していません。従来のアルゴリズムが将来的に改善される可能性や、指数関数的な量子的優位性の定義に関する議論を避け、実世界での応用を示唆する問題において能力実証することを選択したのです。


量子コミュニティはこの新たな成功を歓迎する一方で、私たち(GQI)は、これがセクター内での潜在的な混乱の源にもなる可能性があると考えています。


100×100が新たな基準を設定する


今回の結果は、100×100 の目標に向かう道筋に乗っていることを明らかに示しています。これにより、2024年末までに、24時間の実行内で 100Q×100 ゲートの深さを持つ回路の計算能力が得られることが約束されます。IBMは既に、127×60 の状態にあり、Eagle R3 はまだ可変結合器アーキテクチャへの移行による 2Qゲートの信頼性向上の恩恵を受けていない状態です(これはFalcon R10/Egretで開拓されたもの)。Heronデバイスではこの恩恵が期待できるでしょう。


100×100は、既知のアプリケーションに対して確実に優位性を持つものではありませんが、明らかに「古典を超えた」興味深い能力となるでしょう。私たちは、平穏な量子コンピューティングの時代を経験してきました。さまざまな量子ビットのベンダーが世界中で早期のハードウェア実装を確保するために、協力と共有を行ってきたのです。主に、実機上で実験したいと考える研究者の関心を支えてきましたが、実際のところ、コード開発はシミュレータ上で進めるべきだと考える研究者も少なくありません。100×100の成功によって、それが変わるかもしれないのです。この新しい能力に、開発者へのアクセスを提供できない研究所や施設は、最先端から遠ざかることになるでしょう。


アルゴリズム開発者は舵を戻す必要が


IBMによるNISQ時代のアプリケーションへの新たな道は、アルゴリズム開発者を混乱させるかもしれません。100×100の挑戦は、ハードウェアの忠実度を向上させるだけではありません。最先端のエラー抑制が必要になります。また、積極的なエラー軽減が必要です。ゼロノイズ外挿や確率的エラーキャンセルなどの技術は、非常に多くのショットを自動的に反復するランタイムの実行状態や条件に依存します (そのため、24時間のクロック時間枠があります) 。


GQIでは、既存の VQA(Variational Quantum Algorithms)の概念を、そのまま新しい能力に適用するだけではうまくいかないと考えています。エラーの抑制と軽減に特化したソフトウェア企業が成功することになるでしょう。新しい機会に適応しようとする他の企業が迫る中で、品質が優位となるでしょうから。


NISQに対する収益は、他へのプレッシャーとなる


IBM は大きな進展を示しました。しかし、フォールトトレラント量子コンピューティング(FTQC)への長期的な道を開いたわけではありません。そのアーキテクチャは、熱予算と相互接続の性能向上を実証するという課題に直面しています。しかし、フォールトトレラントへの長期ロードマップに焦点を当てている競合他社も、この発表から焦りを感じるでしょう。多くの人々は、NISQ時代における商業アプリケーションの実現性は、いよいよ低くなると考えていました。そして IBM はそれが実現することを示したわけではありません。しかし、彼らはその方向に舵をを大きく戻しました。収益への手がかりの見込みがないプレイヤーは、それを持つプレイヤーよりも必然的にプレッシャーを受けることになるでしょう。


この技術デモに関する詳細情報については、関連する記事 をご覧ください。そちらではより詳しく説明しています。



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原記事(Quantum Computing Report)

https://quantumcomputingreport.com/


翻訳:Hideki Hayashi

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