欧米・中国を中心に開発が進められてきた量子コンピュータ。そのほかでもシンガポールやインドネシアなどASEANの国々も量子技術への投資を加速している。22年、幾つかのニュースで注目したいのはインドとイスラエルであった。イスラエルの22年を振り返ってみると。。
イスラエルは、人口1,000万人で、ユダヤ系が7割をしめている。米との同盟関係が深く、諜報活動も含めて軍事訓練なども共に行っていると聞く。徴兵制によりユダヤ系の国民は18歳で入隊し、科学に秀でた人材のエリート教育をスタートさせている。退役後、情報産業で活躍する人材が多く、特にベンチャーの起業も盛んにおこなわれている。80年代の後半から情報セキュリティ研究が進められて、現在では「サイバー大国」と呼ばれるまでになった。人材育成も米国と一体となり、多くの優秀な人材が米国の大学を卒業している。
1955年には、イスラエル最初のコンピュータ「WEIZAC」が誕生していて、この年は、「イノベーション国家イスラエルの誕生年」と呼ばれている。
サイバー人材の育成において、徴兵制からのエコシステムが出来上がっているイスラエルだが、そのエコシステムを使用した量子人材育成が本格的になってきた。日本のセキュリティ業界でもイスラエル技術者の優秀さは有名で、技術的な協力関係を築いている。量子技術においても存在感を増してくるであろうことは想像に難くない。
22年のニュースを振り返ってみたい。
光量子コンピュータを開発する Quantum Source が日本円で約20億円の資金を受けたことからはじまった。続いてソフトウェア企業である Classiq が冷却原子コンピュータを開発するColdQuanta(現Infleqtion)とのソリューション提供のため提携。Classiq は、ドイツが主導する量子技術プロジェクトであるセコイア・プロジェクトへも参戦となった。同社はまた、日本への進出も進めているところ。
IonQ が、イスラエルに IonQ Israel LTD を設立したことも話題となった。MAFAT(イスラエル国防省研究開発局)とイノベーション・オーソリティによる70億円の支援発表。そして、新年を迎えたマガジン最初の投稿もイノベーション・オーソリティによる国家プロジェクトへの42億円の資金提供であった。
By Hideki Hayashi