各国で量子ベンチャーの資金調達が進んだ2022年。本年の調達で、日本円で10億円以上の資金を集めた企業をニュースから確認しておきたい。
シードラウンド
〇EeroQ
2017年に設立された量子ハードウェア企業。シカゴに本社をおく。
電子オンヘリウムという特殊なタイプの量子ビットを開発している。
シード:725万ドル
〇Atlantic Quantum
2022年初頭に結成された MITのEquS(Engineering Quantum Systems)グループからのスピンアウト。
超伝導ハードウェア開発。
シード:900万ドル
〇Quantum Source
2021 年に設立されたイスラエルのフォトニック量子コンピュータ開発会社。
シード:1,500万ドル
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電子オンヘリウムは、理研白眉研究チームの川上恵里加氏が中心となり研究が進められているもの。シード資金としては Quantum Sourceの 1,500万ドル(約20億円)が最大。
シリーズA
〇OQC(Oxford Quantum Circuits)
イギリスの超伝導コンピュータ開発企業。
シリーズA:3,800万ポンド
〇Alice & Bob
フランスにある超伝導cat qubitを開発する企業。
シリーズA:2,700万ユーロ
〇PQShield
イギリスに本社をおく、PQC(量子暗号)ソリューション提供企業。
英国、米国、フランス、オランダに展開。
シリーズA:2,000万ドル
〇Terra Quantum
スイスSt. Gallenに本社をおくフルスタック量子技術企業。
シリーズA:6,000万ドル
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OQCの資金提供者としては、東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)が参加している。シリーズAの最高調達額は、 Terra Quantumの6,000万ドル(約80億円)。
シリーズB
〇ColdQuanta
米国コロラドに本社をおく、冷却原子に基づくハードウェア企業。
量子センサー、量子ネットワーク市場においても製品提供。
シリーズB:1億1,000万ドル
〇IQM
超電導に基づくハードウェア開発企業。
フィンランドに拠点を置き、すでにパリ、マドリッド、ミュンヘンに規模を拡大。
シリーズB:1億1,800万ユーロ
〇Qunasys
東京に本社を置く量子ソフトウェア企業。
シリーズB:1,000万ドル
〇Classiq
イスラエルに本社をおく、量子ソフトウェア企業。
シリーズB:4,900万ドル
〇Atom Computing
米国バークレイに本社をおく、中性原子ハードウェア開発企業。
シリーズB:6,000万ドル
〇Xanadu
カナダに本社をおく、光量子コンピュータ企業。
昨年シリーズBとして1億ドルの調達があったが、今回はシリーズCとして。
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シリーズBでは、本年金額が大きくなり、ColdQuantaの1億1,000万ドル(約146億円)、IQMが1億1,800万ユーロ(約167億円)と日本円で100億円をこえる額となった。XamaduのシリーズCも1億ドルとなり、量子技術への期待は相変わらず強い。SPAC上場組と比較すると、一般投資家の興味はそれと比べまだまだ期待は薄い状況といえそう。
日本円で10億円以下の企業も同数ほどニュースとなっていた。来年は世界中がリセッションの年になると言われている状況であり、各国ともに経済が低迷する時代に入ったと考えてよさそう。さらに情報産業も含めて次の経済活況時を牽引する産業が見えていない現状があり、一部では Web3や量子への期待が高まるのも当然かもしれない。
By Hideki Hayashi