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2023年 2月の研究論文・ソフトウェア編

By Dr Chris Mansell, Senior Scientific Writer at Terra Quantum


この1か月で見た、量子コンピューティングと量子通信に関する興味深い研究論文の概要の紹介を以下に。


[ Software ]



Title: Fault-Tolerant Connection of Error-Corrected Qubits with Noisy Links(ノイズのあるリンクで誤り訂正された量子ビットのフォールトトレラントな接続)

Organizations: MIT-Harvard Center for Ultracold Atoms and Research Laboratory of Electronics; University of Bristol


量子ビットアーキテクチャはスケールするのが難しい。イオンはその運動モードのスペクトル混雑があり、超伝導体はクライオスタット内に収まらなければならず、冷却原子のアレイは非球面レンズの視野内に留まらなければならない。これを克服する一つの方法は、量子ビットのパッチを光インターコネクトや超伝導マイクロ波リンクでつなぐこと、あるいは、あるパッチから次のパッチへ量子ビットを移動させることである。しかし、残念ながら、これらの演算に含まれるノイズは非常に高い(最新の動向については、ハードウェアセクションの最初の数記事を参照)。この論文では、パッチ内の誤差が1%程度と極端に小さくなくても、パッチ間の操作で10%程度の誤差があっても、システム全体のフォールトトレラントを維持できることを明らかにしている。




Title: Relaxing Hardware Requirements for Surface Code Circuits using Time-dynamics(Time-dynamicsを使用したSurface Code回路のハードウェア要件の緩和)

Organization: Google


一般的に、量子誤り訂正符号は、時間を重要なパラメータとして含んでいない。しかし、Surface Code は最終的に量子回路で実装されるため、その時間的な構造が重要であることが示唆される。本論文の著者らは、符号を静的ではなく、より動的な観点から扱うことで、従来の最先端符号と比較して多くの利点を見いだした。たとえば、特定の操作に必要な最近接結合が少なくて済むため、実験者が符号を実装しやすくなる。今回の研究は Surface Codeに焦点を当てたものだが、将来的には Color codeのような別の方式を検討することもできるだろう。これらのアイデアをより現実的なエラーモデルに対してベンチマークすることも、次の歩みとなりそうである。




Title: Linear-depth quantum circuits for loading Fourier approximations of arbitrary functions(任意関数のフーリエ近似を読み込むための線形深さ量子回路)

Organizations: Cornell University; Purdue University; Princeton University


量子コンピュータでは、多くのアプリケーションにおいて効率的に関数をロードすることが重要である。本論文の著者らは、そのための方法として、フーリエ級数に着目し、その手法を提案している。量子回路の深さは、フーリエ係数の数と量子ビットの数、両方に線形にスケールする。このスケーリングにより、回路は十分な数の係数を使用して、高い精度で関数を表現することができる。著者らは、1次元および2次元の実関数や複素関数、不連続面の有無について、自らの方法を検証した。また、彼らはノイズのない古典的なシミュレーションと、Quantinuum の H1-1および H1-2 トラップドイオン量子コンピュータを使用して、実験を行った。過去の研究と自分たちの結果を徹底的に比較し、将来の方向性について多くの議論を展開した。




Title: Improved quantum algorithms for linear and nonlinear differential equations(量子アルゴリズムの改善、線形および非線形微分方程式について)

Organization: Riverlane


物理法則は微分方程式の形で記述される。例えば、シュレーディンガー方程式は線形同次微分方程式である。海流、太陽フレア、プラズマダイナミクスなどの複雑な物理現象は、非線形微分方程式によって支配されているため解くのが困難である。そのため、これらの無秩序なシステムの進化を予測することは困難であるが、予測の改善の恩恵は気象予測、航空力学的な乗り物の設計、核融合の維持などにも及ぶ。論文の著者らは、線形および非線形微分方程式を解くための量子アルゴリズムを示している。方程式の安定性を分析するために行列の指数関数が使用され、ブロック符号化行列を使用することで、特異行列や非対角行列に対してもアルゴリズムを機能させることができる。提示されたアルゴリズムは、いくつかの先行アルゴリズムと比較して、指数関数的に高速で、誤差に対する依存性が指数関数的に優れている。




Title: Optimization Applications as Quantum Performance Benchmarks(量子性能ベンチマークとしての最適化応用例)

Organizations: Quantum Circuits Inc.; QED-C; Los Alamos National Laboratory; D-Wave Systems; University of California at Los Angeles; Universities Space Research Association; Indiana University; NASA Ames Research Center


オペレーションズリサーチは、分析手法を用いて意思決定を改善するものであり、民間部門と公共部門の両方で重要な役割を果たしている。彼ら専門家は、例えば、最適化アルゴリズムの実行時間と、解の質のトレードオフを評価・査定するための独自の基準を持っている。この基準は、学術的な量子コンピュータの文献に見られるものとは全く異なるかもしれない。この研究では、量子最適化アルゴリズムは、量子領域に専門知識を持たない人にも意図的に性能特性を理解しやすいようにベンチマークされている。




Title: Computing 256-bit Elliptic Curve Logarithm in 9 Hours with 126133 Cat Qubits(126,133 Cat Qubitで 256ビット楕円曲線対数を9時間で計算)

Organizations: Université Paris–Saclay; Alice & Bob; Sorbonne Université


Cat states は、逆位相を持つコヒーレント状態の重ね合わせのこと。その状態で、ビット反転エラーを指数関数的に抑制し、位相エラーを繰り返し符号で処理する方法がある。2次元の誤り訂正符号では、論理量子ビットあたりの物理量子ビット数が符号距離に対して2次関数的に増加するのに対し、Cat states は1次元の符号をインスタンス化することができ、このスケーリングは線形にしかならない。この論文では、Cat states に基づく Shorのアルゴリズムに対するフォールトトレラントなアプローチが示されている。Bitcoin の署名に使われる楕円曲線離散対数を計算するタスクについて、その性能を分析した。




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原記事(Quantum Computing Report)

https://quantumcomputingreport.com/


翻訳:Hideki Hayashi

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