By Dr Chris Mansell, Senior Scientific Writer at Terra Quantum
ここ1か月で見た、量子コンピューティングと量子通信に関する興味深い研究論文の概要の紹介を以下に。
Software
Title: Quantum Lock: A Provable Quantum Communication Advantage(量子ロック:証明可能な量子通信の利点)
Organizations: University of Edinburgh; Sorbonne Université; Indian Institute of Technology
集積回路は、製造工程で小さくランダムな違いが生まれるため、物理的にユニークだといえる。 Physically Unclonable Function (PUF) は、この事実を使用してネットワークデバイスを認証する。これは、モノのインターネット(IoT)に関連するアプリケーションにとって重要だ。しかし、その安全性については懐疑的な見方が強まっている。この論文では、古典的な PUF の出力を量子状態に符号化することで、非直交量子状態の識別不能性を利用してプロトコルの安全性を高めるハイブリッドPUFを提案している。
Title: Toward perturbation theory methods on a quantum computer(量子コンピュータ上での摂動理論への取り組み)
Organizations: Purdue University; IBM
摂動理論により、物理学者や化学者は単純な量子系の理解から得られた正確な結果を使用して、追加の相互作用を持つ系の固有状態と固有エネルギーを近似することができる。この論文では、摂動理論計算を行う量子回路を考案した。彼らは、広範な物理系に適用可能であるとして、2サイト拡張ハバードモデルを考慮し、その回路を IBMの 27量子ビットコンピュータ上で実装することで、その手法を示した。計算のある側面は重ね合わせで実行できるため、量子回路は古典計算を凌駕するかもしれない。量子回路は訓練や最適化を必要としないため、特に効果的である。
Title: Learning Many-Body Hamiltonians with Heisenberg-Limited Scaling(ハイゼンベルク制限付きスケーリングによる多体ハミルトニアンの学習)
Organizations: California Institute of Technology; University of California; Microsoft
未知のハミルトニアンのパラメータを学習することは、量子計量学、量子計算、多体物理学において重要な課題だ。このタスクを実行するアルゴリズムは、パラメータを学習する精度に対し、ランタイムがどのようにスケーリングするかに基づいて評価されることがある。この論文では、多量子ビットの局所的なハミルトニアンに対するアルゴリズムが提案されており、そのランタイムは精度の逆数に比例してスケーリングすることが示されている。
Title: Demonstration of Algorithmic Quantum Speedup(アルゴリズムによる量子加速の実証)
Organization: University of Southern California
かつて、人工知能はボードゲームの域を出ないと思われていた。しかし現在、世界に信じられないほどの影響を与えている。このことは、この論文で設定されたようなゲーム化された状況がいかに有用であるかを示している。この問題は、Bernstein-Vazirani問題の応用であり、オラクルの 1回の問い合わせの後、プレーヤーは隠されたビット文字列を推測しようとする。不正解の場合、隠しビット列が変更され、ゲームが繰り返されていく。オラクルが量子的であり、不完全さがない場合、ランタイムはオラクルが古典的な場合よりも問題のサイズに合わせて改善される。これはアルゴリズムによる量子的な高速化であり、予想や仮定に依存するものではない。IBM量子コンピュータで動的デカップリングを使用することにより、この高速化は調査された問題サイズの全範囲で実証された。
=============================
原記事(Quantum Computing Report)
https://quantumcomputingreport.com/
翻訳:Hideki Hayashi