By Carolyn Mathas
ちょうど1年前、BT と 東芝はロンドン首都圏を網羅する世界初の商用量子セキュア通信ネットワークを構築した。そして今回、HSBC はこのネットワークに参加する最初の銀行となることを発表した。
HSBC は、Quantum Key Distribution (QKD) を使用して英国の2つのサイトを接続する。カナリーワーフにある同社のグローバル本社と、62 km離れたバークシャーにあるデータセンター。試験には、金融取引、安全なビデオ通信、光ファイバーケーブルを使用してテストデータを安全に伝送するためのワンタイムパッド暗号化シナリオが含まれている。Amazon Web Services (AWS) と共同で AWS Snowball Edge デバイスを使用した AWSエッジコンピューティング機能は、この取り組みの重要な部分である。
QKD技術は、光の粒子と量子物理的性質を利用して、当事者間で秘密鍵を交換するもので、盗聴者や量子コンピューターによるサイバー攻撃から解放する。
HSBC 銀行および HSBCヨーロッパのコリン・ベル最高経営責任者(CEO)は、同社が業界をリードする試験の陣頭指揮を執り、専門家の採用、戦略的なパートナーシップに投資することで、開発された技術を展開していくと述べた。得られた知見は、金融サイバーセキュリティ・アプリケーション開発の原動力となるだろう。
HSBC が量子に関わるのはこれが初めてではない。例えば、量子的な未来に向けて、グローバル事業の準備を目的とした量子プログラム・プロジェクトを実施している。また同社は、IBMの量子コンピュータを銀行業務に活用するための試験にも参加しており、3年間の協力関係を結んでいる。その上で、IBM の量子アクセラレーター・プログラムに参加し、Eagle 127量子ビット・プロセッサーを含む IBMの量子コンピュータにアクセスできるようにしている。
また、欧州における量子コンピューティングの次なる応用プロジェクトにおいても重要な役割を果たしている。欧州の 12の企業と研究所からなるコンソーシアムが協力して、幅広い用途における潜在的な使用例を探究。具体的には、リスク分析、機械学習、サイバーセキュリティといった分野である。HSBC は NEASQCプロジェクトに参加する唯一の金融サービス機関ともなっている。
商用利用可能な量子コンピュータはまだ実現されていないが、資金提供プログラムやパートナーシップの拡大、そして増加するユースケースにより、その利用可能性が現実のものとなり、銀行業界の安全性向上へと繋がっていくだろう。
HSBC/UK の商業的な量子関連取り組みについては、プレスリリース に詳しい。
※参考
HSBC:HSBCは「Hong Kong and Shanghai Banking Corporation」の略であり、イギリスに本店を置く世界最大級の銀行。
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原記事(Quantum Computing Report)
https://quantumcomputingreport.com/
翻訳:Hideki Hayashi