ここ数日の間に、カナダ、デンマーク、ノルウェーの政府機関や、その他の組織が作成した3つの文書に出会いました。そこには、それぞれの国における量子エコシステムの様々な側面と、量子市場への参加に向けた国家戦略を強化するための提言が記されていました。とても読み応えのある内容で、要約として紹介します。
最初に紹介する文書のタイトルは 『The Canadian Quantum Ecosystem Report 2023』 です。この報告書を作成したのは、カナダのブリティッシュコロンビア州にある量子アルゴリズム研究所(QAI)。QAIは、 2000年に設立され、カナダにおける量子リテラシーの向上、カナダにおける量子人材の育成、ブリティッシュコロンビア州とカナダにおける量子活動の促進をその目的としています。報告書では、カナダで量子技術に取り組んでいる組織の概要、特許活動や技術論文の作成に関するレビューと他国との比較、量子技術における国際協力の分析、人材の確保と誘致に関する分析、分野別のソーシャルメディア表現に関する分析が行われています。これらの分析結果を含む報告書はこちらのリンク から確認してください。
2つ目の文書は、デンマークの高等教育科学省が作成したもので、タイトルは『Strategi for Kvanteteknologi(英語では「Strategy for Quantum Technology」)』です。これは、量子技術に関するデンマークの国家戦略として計画された 2部構成のシリーズの第 1部。この第 1部では研究とイノベーションに焦点を当て、今年後半に発表予定の第2部では、デンマークにおける量子技術の商業化と応用に焦点が当てられます。長期的な戦略的投資、国際協力、デジタル研究インフラへのアクセス改善などの目標が掲げられています。同文書では、デンマーク政府が量子研究とイノベーションを支援するため、2023年から2027年の間に10億デンマーク・クローネDKK(約210億円)の予算を組むことを提案。政府はすでに、2023年に2億1,200万DKKを割り当てているため、2027年までこの資金レベルを継続することになるでしょう。この文書の簡単な概要を提供するWebページ(デンマーク語)はこちらのリンクで、文書全文はこちらのリンク で確認することができます。
2022年11月に開催されたノルウェーのQCワークショップは、Simula、Sigma2、OsloMet、SINTEFを含むノルウェーの企業によって行われました。その結果、ワークショップで議論された様々なコンセプトから、『ノルウェーの量子コンピューティング戦略への貢献』と題する意見書が発表されています。この意見書では、ノルウェーがこの市場への参入を成功させるためには、ノルウェーの国家戦略と専用投資の必要性が訴えらえれています。現在、ノルウェーには公式な量子政策や量子戦略、焦点を当てた投資はありません。そこで、量子技術の可能性、他国で行われている活動、教育、研究、イノベーション、インフラの分野での幅広い提言が述べられています。この文書は、量子コンピューティングのみに焦点を当てたものであり、量子通信や量子センシングなど、量子技術の他の分野についての分析や提言は含まれていません。目的は、他のステークホルダーとの議論を刺激し、ノルウェーの国家量子戦略の策定を促すことです。文書はこちらのリンク からダウンロードできます。
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原記事(Quantum Computing Report)
https://quantumcomputingreport.com/
翻訳:Hideki Hayashi