[ IBM Quantum System One at Cleveland Clinic. Credit: Cleveland Clinic ]
2021年に、IBMが Cleveland Clinicとの10年間のパートナーシップを発表し、2023年に IBM System One量子プロセッサを、現地に設置する意向を示したとお伝えした。IBM と Cleveland Clinicは、マシンの配備が完了したことを発表。このことは、IBMにとって重要なマイルストーンであろう。IBMは、ニューヨーク州の研究拠点以外に、ドイツや日本などにマシンを導入している。しかしそれらは、パートナーである組織の近くにある IBMの関連国際施設内に配備されている。マシンが物理的に自社ビルの中にあるため、セキュリティ、メンテナンス、スペアパーツ、ユーティリティなど、多くの面で管理しやすかったと言える。 Cleveland Clinicの設置は、IBMのビル内に設置されていない初の量子プロセッサーであるため、IBMは今後、完全リモートのオンプレミス環境で、それらの問題に対処する方法を学ぶことになる。
このマシンは、ヘルスケア研究に特化したもので、特定のタンパク質に対する薬剤のスクリーニングと最適化、心血管リスクの量子拡張予測モデル、ゲノム配列のナレッジや、大規模な薬剤ターゲットデータベースを検索して、さまざまな疾患に有効な既存薬剤を見つけるなどの問題に取り組む。127量子ビットの IBM Quantum System One プロセッサは、将来的なアップグレードに対応できる機能を備えている。そのため、IBMと Cleveland Clinic は、より高度な技術が利用可能になり次第、IBM Quantum System One、または IBM Quantum System Two のいずれかへのアップグレードを実施する予定だ。今回の導入については、IBM とクリーブランド・クリニックが提供したプレスリリース を参照。
また、IBMは、スペイン・バスク州サンセバスチャンのイケルバスク財団のメインキャンパスに建設される新しい IBM-Euskadi Quantum Computational Center に、IBM Quantum System Oneをもう1台設置すると発表した。127量子ビットプロセッサで、2024年末の設置完了を目指す。このシステムは、国際的な研究協力の拡大、世界最高水準の基礎科学研究の実施、地域の量子技術を身につけた人材の啓蒙などに活用される予定だ。
イケルバスク財団は、バスク州政府の資金援助により、このプロジェクトに5,000万ユーロ(約70億円)以上を投資。バスク州における科学インフラへの投資としては過去最大規模となる。IBMの量子プロセッサーは、現在ドイツと日本に設置されているほか、カナダ、韓国でも設置が予定されており、これが 5カ国目の設置である。本発表の詳細については、IBMが提供するプレスリリース を参照。
※参考
Cleveland Clinic:臨床からケア、医療・創薬の研究、教育までの複数領域を扱う非営利のメディカルセンター。
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原記事(Quantum Computing Report)
https://quantumcomputingreport.com/
翻訳:Hideki Hayashi