Crédit Agricole CIB(クレディ・アグリコルCIB)は、フランスのパリに拠点を置き、全世界で8,900人以上の従業員を擁する Credit Agricole Group の企業および投資銀行部門である。彼らは量子コンピューティングの潜在的な金融ユースケースを調査しており、過去1年半にわたって Multiverse Computingと Pasqalと共に2つの異なるユースケースに取り組んできた。目指すのは約 50量子ビットの現在利用可能な量子プロセッサを使用して概念実証の実装開発をして、約300量子ビットのより大きなプロセッサが今後 1年から 2年で利用可能になったときに、製品用途に実装をスケールアップすることであった。
最初のアプリケーションは、債務者が融資を返済する確率を推定し、信用リスクの高い借り手を特定して信用格付けの引き下げを予測する信用格付け問題である。この判断に関連するデータは大量に集めることができ、古典的な機械学習の利用法として広く研究されている問題である。古典手法は良い結果をもたらしてはいるが、最適ではない可能性があるため、銀行は量子強化機械学習を使用してより最適な解決策を見つけることができるかもしれないと考えている。この結果は、arXivに投稿された 「Financial Risk Management on a Neutral Atom Quantum Processor」 というタイトルの論文で発表されており、ランダムフォレストと呼ばれる最先端の古典的アルゴリズムに対して、より優れた解釈可能性と、比較可能なトレーニング時間を実現する将来の量子アプローチの可能性を示している。
2つ目は、ニューラルネットワークを用いた資本市場におけるデリバティブの評価に関して。標準的な古典的手法の主な問題点は、学習機能を達成するために多くの時間と、大きなメモリが必要なことである。このアプリケーションで Multiverse は、古典的なコンピュータ上で動作する量子に触発された Tensor Neural Network 技術を使用して、速度とメモリ要件を最適化した。将来的には、この手法を実際の量子コンピュータに移行して、さらに改良を加えたのち、日常の運用環境で使用できるようになるかもしれない。この研究を記述した技術論文は、arXivに掲載された2つのプレプリント論文が ここ と ここ で入手できる。
なお、今回の資金調達に関する3社の調査の詳細は、Crédit Agricole CIBのニュースリリース に掲載されている。
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原記事(Quantum Computing Report)
https://quantumcomputingreport.com/
翻訳:Hideki Hayashi
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