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[続報] 豪Diraq (シリコン量子ドット型) がFTQC実現を目標に商業研究所をシドニーに新設。既存の半導体製造工場で量子チップの量産実現を最終的に目指す

[English follows Japanese]


Source: Diraq. (Left) Prof. Andrew Dzurak (CEO & Founder, Diraq) and (Right) Mr. William (Bill) Jeffrey (Chairman, Diraq). 創業者でCEOのアンドリューさん(左)と会長のウィリアムさん(右)の大変嬉しそうな様子。



シリコン量子ドット方式の量子コンピュータ企業Diraqは2024年2月21日にオーストラリアのシドニーにあるニューサウスウェールズ大学(UNSW)キャンパス内に、最新鋭の商用量子コンピューティング研究所を正式に開設した。


既存の半導体ファブでの量子チップ量産が最終目標

この研究所の設立目的は、一般的な既存の半導体製造工場で量子チップの量産を実現することである。Diraqの量子チップは、量子情報の単位である量子ビットを制御するための集積回路であり、つまり数十億量子ビットを搭載したシリコンチップである。極低温での低消費電力レベルでのアナログ回路動作が要求されるので、通常の半導体にはない動作環境となる。そのためDiraqは、シドニーを拠点とする集積回路設計会社のPerceptia Devicesとともにチップの設計と検証を行い、UNSW大学のエンジニアや研究者らと極低温下でのデバイスの動作調査を行なっている。


Diraqが新設した研究所の広さは200平方メートル。量子計測のための低振動かつ中断のない環境が整い、シリコン量子デバイスの極低温試験と精密計測のための最新鋭の装置が設置された。その機能セットは、人間の髪の毛1本の1000分の1以下の幅しかないものである。



(出所)Diraq. 研究所のオープン記念パーティーには、Quantuonation(クァントネーション)をはじめとするDiraqの投資家たちや、学術界・政府などの関係者200名以上が出席した。



FTQC(誤り耐性量子コンピュータ)を実現する最短ルート

量子業界のVCとして有名なQuantonationのPartnerであるChristophe Jurczak氏は

「Diraqのような企業がオーストラリアを量子業界における先進国へと押し上げている。Diraqの量子ドット技術は、まさに世界をリードする研究であり、Quantonationは先日発表した通りDiraqのシリーズA-2資金調達ラウンド1,500万米ドル(約22.5億円)をリードできたことを嬉しく思っています。Diraqの技術(スピン・イン・シリコン)が量子コンピュータの商用化を一気に実現する可能性が高いものであり、FTQC(誤り耐性量子コンピュータ)を実現する最短ルートであると考えているため、Diraqへの投資を実行しました」と祝辞を述べた。



将来は既存半導体ファブで小型の集積化されたシリコンチップを製造し量子の商用化を目指す

また、DiraqのCEOで創業者のAndrew Dzurak氏は次のように述べた。

「当社の大きな一歩となる今回のシドニーの商業研究所新設につきましては、提携先の機関・企業・VCなどから多大なるご協力を賜り大変感謝しております。また、量子業界のエコシステムの繁栄に引き続き貢献してくださることにも感謝しています。


そして、他の量子コンピュータのハードウェア方式では、大規模で高価なシステム構築を強いられるのに対して、Diraqの方式は「シリコン量子ドット型」と呼ばれるものであり、当社が開発しているのは小型かつ高度に集積化されたシリコン・チップです。1つのチップに数百万、最終的には数十億の量子ビットを搭載することができるものです。


Diraqの優位性は、既存の電子機器のチップ製造と同じ半導体プロセスを使用して製造できることにあります。新しい研究所の立ち上げと直近の資金調達によって、Diraqはプロトタイプ開発から標準的な半導体ファウンドリによるチップ製造へとシームレスに移行する態勢が整いました。今回の新しい研究所の開設により、Diraqは完全に量子の商用化に狙いを定め開発することになりました。民間パートナーからの資金提供に加えて、米国陸軍研究局からの助成金、CRC-PやQCCFを含むオーストラリア政府からの助成金も獲得しています。」


Diraqのプレスリリース原文はこちら



(出所) Diraq. 量子コンピュータの方式別のチップ当たり量子ビット数比較表。計算機として機能するためには最低限100万量子ビットが必要と言われている。



[補足]


量子コンピュータの5大方式(2024年現在)

現在、量子コンピュータのハードウェアの方式は、大きく分類して5種類ある。超伝導/イオントラップ/光/中性原子/半導体。最終的にどの方式が生き残り大規模に商用化されるかは不明であり、我々は誰もそれを断言できない。それゆえ、2024年現在は未だ量子コンピュータ開発黎明期にあるとも言われている。ただし、半導体方式は、既存のファブを活用できるため最も商用化に近い方式なのではないかと考えられている。



半導体方式の量子コンピュータ企業

(アメリカ)intelequal1

(イギリス)Quantum Motion

(日本)HITACHI blueqat

(オーストラリア)Silicon Quantum ComputingDiraq



Diraqについて

Diraqは、シリコン量子ドット技術を利用した量子プロセッサーを構築するオーストラリアの企業。20年以上にわたる研究と11の特許を有し、1億3,500万米ドル以上の資金調達によって開発を進めている。その技術は、今日の半導体製造ファウンドリーでの既存のシリコン製造プロセスにを活用でき、より迅速かつ安価な市場投入を実現できる可能性がある。Diraqの目標は、単一チップ上の量子ビット数を数百万、最終的には有用な商用アプリケーションに必要な数十億まで増加させることにより、量子コンピューティングに革命を起こすこと。



Quantonationについて

Quantonationは、物理学と量子技術に特化した初のアーリーステージVCファンド。高性能計算、医療用画像処理、超精密センシングなどの分野。Quantonationは、これらの技術の商用製品への移行を支援することを目的としている。フランスのパリと米国のボストンに本社を置き、世界中に投資を行っている。



Perceptia Devices について

Perceptia Devices は、オーストラリアのシドニーとシリコンバレーに拠点を置く IP および設計サービスのプロバイダー。高速かつ超低電力のミックスドシグナル半導体設計に重点を置いている。競合他社とは一線を画すオールデジタル PLL の専門化と革新により、要求の厳しいアプリケーションに価値をもたらす独自の特許取得済みのアーキテクチャと回路のポートフォリオを着実に構築できる。


記事: Kaori Tanaka


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Diraq inaugurates a new commercial quantum computing laboratory in Sydney, Australia, marking a significant stride in advancing fault-tolerant quantum computing. Situated at the UNSW campus, the lab boasts cutting-edge infrastructure to facilitate the production of silicon chips housing billions of qubits. The facility spans 200 square meters (2152 sq. feet) and is equipped with state-of-the-art cryogenic testing and precision measurement equipment for silicon quantum devices. Diraq’s CEO, Andrew Dzurak, emphasized the company’s focus on developing highly integrated silicon chips through standard semiconductor foundries, aligning with its mission to revolutionize quantum computing. Supported by substantial funding, including grants from the U.S. Army Research Office and Australian Government including the CRC-P and QCCF, Diraq aims to harness existing chip fabrication technology to realize the transformative potential of quantum computing on a commercial scale. The press release from Diraq announcing the opening of this laboratory can be accessed here.


Source:

Quantum Computing Report

https://quantumcomputingreport.com/

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