新しいビルを設計する際に、重要となる要素に次のようなものがある。安全性と持続可能性に関する要求事項を守るという制約がある中で、ユーザーの快適度を満たし、環境負荷を最小化し、材料コストを削減するために、冷暖房空調(HVAC)システムを適切にすることだ。このような最適化問題は非常に複雑で、古典的なコンピューティング技術では効果的に解くことが難しい。D-Waveの量子アニーラは、この種の最適化問題の解決に適しているため、Vinci Energies および QuantumBasel と協力して、D-Waveの技術がこの問題をどのように解決できるかを研究している。
Vinci Energies は、フランスのコンセッションおよび建設会社である Vinci Group の子会社で、産業メンテナンス、インフラ、デジタルサービスおよびエンジニアリングの分野で活動しており、9万人以上の従業員と2022年の売上高は約167億ユーロ (約2.6兆円) 。
QuantumBasel は、企業、研究機関、スタートアップ、大学向けにトレーニング、ワークショップ、量子コンピューティングリソースへのアクセスを提供するために、uptownBaselグループによって昨年開設された量子および人工知能のためのコンピテンシーセンター(高い専門知識や能力を有する組織)である。
この6ヶ月のプロジェクトは概念実証(POC)を目指すもので、2つのフェーズに分かれている。最初のフェーズである問題定式化フェーズはちょうど完了し、HVAC設計のさまざまなパラメータと制約を D-Waveプロセッサで実行できる 2つの異なるモデルに変換する 2つのモデルが作成された。続くフェーズは、D-Waveマシンでそのモデルを実行し、結果をレビューすることである。今回のPOCで良好な結果が得られれば、このアプローチは将来の HVAC 設計プロジェクトに採用される可能性がある。
この種の問題は、エネルギー分野や建設分野で量子コンピューティング最適化を使用する様々な機会の好例である。このプロジェクトの詳細については、D-Waveの Webサイトに掲載されているプレスリリース を参照。
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原記事(Quantum Computing Report)
https://quantumcomputingreport.com/
翻訳:Hideki Hayashi