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コラム:Ford と BMW、Quantinuum の InQuanto で量子化学の課題を解決

By Carolyn Mathas


自動車業界はさまざまな理由から量子技術を強力かつ早期に採用しようとしています。量子コンピュータは最適化とシミュレーションが得意です。材料設計、バッテリー技術のシミュレーション、コストと時間のかかるリアルタイムテストとプロトタイプ作成を可能な限り排除することなど、複雑な課題を解決することが期待されています。


Ford BMW は、Quantinuum InQuanto 計算化学ソフトウェアプラットフォームを使用して、こういった課題に対処していることを発表しました。


Ford とバッテリー化学


先日、Fordの量子研究者たちは、量子コンピュータを使って Quantinuum でモデル化した EVバッテリー材料を使った新しい研究結果を発表し、将来のより強力なシステムによって、化学シミュレーションが有用になることを示しました。Ford の研究チームは、Quantinuum の InQuanto と、同社の Hシリーズイオントラップ量子ハードウェアを使って、リチウムイオン電池の化学のシミュレーションをテストしました。


リチウムイオン電池は何度も充放電が可能ですが、熱に弱く、本質的に燃えやすいという問題があります。エネルギー密度、電力密度、ライフサイクル、安全性、コスト、リサイクル性の向上と、まだまだ改善点が多い状況。そこで量子計算化学に期待がかかっています。この調査では、「計算化学は、充放電メカニズム、電気化学的および熱的安定性、構造相転移、および表面挙動に関する洞察を提供でき、バッテリーの性能と堅牢性を向上させる材料を見つけるために極めて重要な役割を果たす」ことがわかりました。


量子コンピュータを使ったリチウムイオン電池化学の研究では、量子力学系の基底状態を求めるアルゴリズムを使いました。ハイブリッド量子・古典アルゴリズムは、量子計算から恩恵を受ける分子システムの部分を解決し、残りの計算は古典的なコンピュータの仕事です。


BMWと水素燃料電池


BMWは、AWS上の InQuantoプラットフォームを使用して、水素燃料電池パワートレインに使用する材料の表面特性をシミュレーションしていることを発表しました。新しい燃料電池技術の開発における大きな課題は、酸素還元反応 (ORR) の速度が遅いことです。ORR のような触媒および電極触媒化学反応に関わる研究のほとんどは、計算化学の密度汎関数理論(DFT)法を使用しています。DFT はエラーのキャンセルに依存しており、精度が不十分です。しかし、量子コンピューティングは、DFTの妥協なしに、複雑なシステムの正確な計算を実現する可能性を秘めています。


InQuanto


InQuanto プラットフォームにより、計算化学者は、InQuanto ライブラリから入手できる実証済みのコードとアルゴリズムを使用して研究に集中することができ、多くのコードを記述する必要がありません。量子系を扱った経験のない計算化学者でも、使いやすいインターフェースにアクセスできる。彼らは、超伝導回路デバイスのIBMシリーズ、QuantinuumのイオントラップデバイスのHシリーズ、Powered by Honeywell、その他のさまざまなハードウェアデバイスやエミュレータなど、ハードウェア上で分子や材料の大規模な問題のシミュレーションを実行することができます。


inQuanto 2.0は、量子コンピュータを初めて使用する人向けに、より汎用性が高く、拡張可能で適用可能なプラットフォームを提供するためにリリースされたばかりであり、最新の量子アルゴリズム、高度なサブルーチン、および化学に特化したノイズ軽減技術を中心に構築されています。新しいバージョンでは、ベクトル計算を桁違いに高速化する新しいプロトコルクラスと、対称性を利用してメモリ要件を削減できる積分演算子クラスによって効率が向上しています。詳細については、Ford BMW InQuanto を参照してください。



※参考

パワートレイン:エンジンが生み出した回転エネルギーを駆動輪へ伝達する装置類の総称

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