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コラム:フルスタックの量子コンピューティングベンダーを選ぶべきですか?

By Yuval Boger


量子コンピュータの、ハードウェアとソフトウェア、両方を提供する企業のことをフルスタックベンダーと呼んでいます。Quantinuum(HoneywellのハードウェアとCQCのソフトウェアの組み合わせ)や、Pasqal(ハードウェアベンダーがソフトウェア企業のQu&Coと合併)など、いくつかのM&Aを正当化するために、統合製品の潜在的な利点として利用されたことも。


フルスタックアプローチを支持する人達は、ハードウェアとソフトウェアのチームが緊密に統合することで、より優れた量子ソフトウェアを生み出すことができると考えています。例えば、社内のソフトウェアチームは、Quantinuumの回路内測定やColdQuantaのグローバルフェーズゲートなどのユニークなハードウェア機能を十分に活用することができるかもしれません。またハードウェアチームは、既知の問題や限界についてよりオープンに議論し、それらを回避する方法を共同で考案することができるかもしれません。さらに、ソフトウェアチームが必要な機能を把握しているため、次世代ハードウェアプラットフォームの要件を特定するのに役立つかもしれないでしょう。


Appleは、いつもこのような議論の主役になります。もちろんAppleが量子コンピュータを作っているからではありません。ソフトウェアとハードウェアの緊密な統合が、iPhoneやMacなどのアップル製品のユーザーに優れたユーザーエクスペリエンスをもたらしたからです。


アナリストの中には、フルスタック企業は、焦点が定まっていない企業なのではないか、と考える人もいるかもしれません。ハードとソフトの両方に全額出資するのは難しいでしょうから。ソフトウェアのイノベーションは、フルスタック企業以外の何十ものベンダーから生まれる可能性があり、それをハードウェアと結びつけることで、外部ベンダーが企業とのコラボレーションを阻害する恐れがあります。


そして、Appleの話題が出ると、そのアナリストが、Appleはこの地点に到達するのに30年かかったとあれこれ指摘するでしょう。しかし、現在の量子テクノロジーとは異なりシリコンベースのCPUがうまくいかないという懸念はなかったのです。


 株主やアナリストならともかく、ユーザーはどうしたらよいでしょうか?


即効性のあるソリューションが必要で、現在のコンピュータの厳しい制限に耐えられるユーザーには、フルスタックソリューションが魅力的かもしれません。窓口は一本化されるので、統合テストはほとんど必要ないのです。しかし、私見では、必ずしも同じベンダーのものではない「最優秀」なコンポーネントの方が、より強い魅力を感じています。


その理由をお話します。どの技術が、どのベンダーが、量子競争に勝つのか、今のところ全く不明であるのは言うまでもないでしょう。超伝導量子ビットになるのか?トラップイオンか?それとも光量子ビットなのか?最適な量子コンピュータは1ヶ月おきに変わるし、あるアプリケーションに最適なモデルが、別のアプリケーションに最適とは限らないわけです。私の経験ですが、ユーザーは「ハードウェアのポータビリティ」、つまり、あるプラットフォームから別のプラットフォームへ、ソフトウェアを素早く移動させることが可能かに興味を持っています。ユーザーは、異なるハードウェア・プラットフォームでソリューションをベンチマークし、それぞれのプラットフォームに問題を適合させる能力、結果の精度、その他のパラメータを見ることを好んでいます。


こんなケースも考えなければいけないでしょう。今はハードウェアの会社が多すぎる。十分な資金を確保できなかったり、買収されたり、間違った技術に賭けたりして、数年後には存在しなくなる会社もあるのではないか。


フルスタックベンダーのソリューションを選択するのは簡単なことかもしれませんが、私は多くの状況において、賭けにはヘッジすることが戦略的によいことだと信じています。



著者紹介:Yuval Boger

量子コンピュータの経営者。元祖Qubit Guyとして知られ、直近ではClassiqのチーフ・マーケティング・オフィサーを務めていた。

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