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コラム:量子ビット・シャトリングと、中性原子コンピュータへの応用

By Yuval Boger


昨年、ある科学者グループが『Nature』誌に発表した論文では、 「もつれた原子配列のコヒーレント移送」 と呼ばれているものに関して論じた論文を発表しました。QuEra Computing、MIT、インスブルック大学の科学者を含むこのハーバード大学主導のグループの研究は、中性原子アレイを使用する大規模な量子コンピューティングの開発にとって極めて重要な役割を果たすことが期待されています。


下のビデオでは、このシャトリングを示しています。これはアニメーションではなく、実際のビデオ (強調のために赤い楕円が追加されている) です。


[ Credit: Lukin group, Harvard University ]


同時に移動する物理的な量子ビットのグループを示すと共に、赤丸はステップごとに近くの量子ビットともつれる可能性を示しています。コヒーレント量子ビットシャトリング(量子状態を保ったまま移動させる機能)は、次世代量子コンピュータの構築方法に大きな影響を与える可能性があります。その潜在的なインパクトは、誤り訂正、マルチゾーン・アーキテクチャ、スケールアップの3つの分野で評価することができます。


Error correction(誤り訂正)


大規模な量子コンピュータを構築する上での主要な課題は、エラー管理にあります。誤り訂正のために 2進数 1桁からの情報を複製できる古典的なコンピューティングとは異なり、量子力学ではそのようなコピーはできません (ノー・クローニング定理) 。そのため、量子誤り訂正では、量子もつれによって複数の量子ビットに情報を分散させ、冗長性を持たせます。


量子ビットの状態を保ったまま移動させることができるため、近くの量子ビットを絡ませ、その絡まった量子ビットをより広い範囲に広げることができます。領域全体に量子ビットを広げるような誤り訂正符号の1つがトーリック符号であり、論理量子ビットは2次元格子にまたがるように符号化されています。論理量子ビットが広い面積に広がっているため、局所的なエラーは論理量子ビットのごく一部にしか影響せず、全体の量子情報にダメージを与えることなく誤り訂正することが可能に。このトーリックコードの図解は、ハーバード大学、インスブルック大学、MIT、AWSによる『Nature』の記事をご覧ください。


[ 1: The two logical qubits are separate ][ 1: The two logical qubits are separate ]




[ Step 2: The logical qubits are brought together ]



[ Step 3: A quantum operation is performed ]



Multi-zone operation(複数領域運用)


量子ビットの状態を保ったまま移動できるようになれば、複数のゾーンを持つ量子コンピューティングアーキテクチャーの開発を想定することができます。例えば、3つのゾーンを持つアーキテクチャを想像してください。


  • 論理量子ビットに対して量子演算を行う処理の領域

  • 量子ビットがより安定した状態に置かれ、コヒーレンス時間が長くなるメモリの領域

  • 誤り訂正や条件実行のために、特定の量子ビットを回路途中で測定する測定領域


量子ビットのシャトリングにより、必要に応じてこれらの領域に出入りすることができます。


Scale-up


誤り訂正された量子ビットは、より長い回路の実行を可能にするという事実以外にも、制御信号の問題があります。制御信号は、個々の量子ビットの状態を変化させるだけでなく、多量ビット演算を行うためにも必要です。しかしながら、100万量子ビットのマシンを考えたとき、数100万個の制御信号が必要でしょうか?4Kテレビを開けたら、すべての画素に電線が通っているなんて、そんなのバカバカしい話です。量子ビットシャトリングでは、制御信号を増やさずに量子ビットの数を増やすことができるのです。


さらに、量子ビットシャトリングは、任意の量子ビット間の接続を可能にします。これは、量子ビットが最も近い隣人にだけ接続される固定レイアウトの構成とは対照的なものです。Any-to-Any接続は、より少ない情報量で情報を伝播できるため、回路を圧縮することができます。


Summary(まとめ)


結論として、状態維持のまま量子ビットの移動ができるなら、量子コンピューティングの未来に大きな影響を与え、その可能性を最大限に引き出すことに一歩近づくことができるのです。この進歩により、誤り訂正、マルチゾーン・アーキテクチャ、スケーリングに対する革新的なアプローチが開かれるでしょう。複雑な計算や大規模な回路を扱うことができ、エラーを効果的に管理できる、より柔軟で堅牢、かつ効率的な量子コンピューティングアーキテクチャの実現が見えてきます。



※著者紹介:Yuval Boger

QuEra(中性原子量子コンピュータのリーダー)の最高マーケティング責任者です。QuEraの256量子ビットコンピュータは、Amazon Braketで一般公開されています。



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原記事(Quantum Computing Report)

https://quantumcomputingreport.com/


翻訳:Hideki Hayashi


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