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Intel、12量子ビットの 「Tunnel Falls」 チップで、沈黙を破る


[ A photo shows one of Intel’s Tunnel Falls chips on a human finger to display its scale. Silicon spin qubits are up to 1 million times smaller than other qubit types. The Tunnel Falls chip measures approximately 50-nanometers square, potentially allowing for faster scaling. (Credit: Intel Corporation) ]



Intel の量子への取り組みについては、幾つかの情報をこれまでに何度か記事にしてきた。昨年、Intel は量子ソフトウェア開発キットをリリースしたが、これまでに、ハードウェアデバイスのリリースはなかった。今回 Intel は、12量子ビットの Tunnel Falls デバイスを発表したことで、その状況は一変することになった。


他とは異なり、システムを構築しクラウドアクセスをサービスするのではなく、Intel は選ばれた政府機関や学術機関と協力し、機関が独自のシステムを構築し、量子ドット技術の特性を研究できるように、このチップを提供している。Tunnel Falls を最初に受け取る機関は、メリーランド州カレッジパークにある物理科学研究所の LPS Qubit Collaboratory(LQC)、サンディア国立研究所、ロチェスター大学、ウィスコンシン大学マディソン校。Intel は、これらの機関と提携してデバイス特性を研究し、その成果を次世代の開発に役立てていく。今後、さらに多くの政府機関や学術団体にこのチップが提供され、研究が進んでいくだろう。


Intel の量子技術はまだ初期段階にあるが、半導体互換の量子ドット量子ビット技術を使って急速にスケールアップする可能性が十分にある。同社は、量子ドットで作られた量子ビット (スピン量子ビットとも呼ばれる) は、超伝導技術で作られた量子ビットより 100万倍小さいと指摘している。また、オレゴン州ヒルズボロにある最先端の大容量 300ミリウエハ製造工場でこのデバイスを製造することができ、高い歩留まりと高精度を達成。各ウエハが 24,000個以上の量子デバイスを保持し、全体で95%という非常に高い歩留まり率を達成していると述べた。彼らはまた、BlueFors Afore と共に開発したカスタムのクライオプローバを使用して、1.7ケルビンの温度でウェハ上のすべてのデバイスをすばやくスキャンし、さらなる調査やシステムへの搭載に適したデバイスを選択している。


Intel はさらなる強みを持っている。材料科学の専門知識と各種機器ベンダーとの関係だ。一つの例として、デバイスの平面 Si/SiGe ヘテロ構造に精製されたシリコン-28同位体を使用していることがある。天然のシリコンには シリコン-29 や シリコン-30 など他の同位体が混ざっている。シリコン-28の利点は、他の同位体とは異なり、ゼロの核スピンを持っていること。量子では、このことが大きな違いとなる。なぜなら、これによりコヒーレンス時間が大幅に増加し、エラーレートが低下し、計算精度が向上するからだ。


デバイスのトポロジーは、量子ビット12個の直線的な配列であり、各量子ビットは計測可能な4つのサイト(特定の位置や場所)を持っている。各量子ビットは、図示されたように最も近い隣接量子ビットとの間で、2量子ビットゲートを実行することができる。このトポロジーは、実用的な量子プロセッサには制約があるため、次の論理的なステップは、グリッド状に配置された2Dスピン量子ビットデバイスを作成することだ。具体的な次のステップは明確ではないが、Intel はすでに次世代デバイスの設計から製造を行っており、2024年に提供する予定となっている。また、Intelはオランダのパートナーである QuTech と共同で、クライオCMOS 制御チップ「Horseridge」 を開発している。これにより、制御ロジックを量子ビットチップに近づけ統合することが可能となり、システムの製造性と信頼性が向上するだろう。現在の Tunnel Falls チップでは使用されないが、将来的には使われていくものと見られている。


[ Diagram of Intel’s 12 Qubit Quantum Dot Chip. Credit: Intel ]


Intel は、量子戦略における長期的な展望を持っている。彼らは、NISQレベルのマシンでは大規模な量子コンピューティングビジネスを築くのは難しいと考えており、数百万個の量子ビットを持つ完全誤り訂正型フォールトトレラントプロセッサが量子コンピューティングの発展に必要であると信じている。彼らの技術アプローチはこれを反映しており、迅速にスケーリングし、数百万個のキュービットを提供できるロードマップを目指す。長期的な商業化へのアプローチについては何も言っていないが、私たちは、彼らが古典マイクロプロセッサと同様のアプローチを取るのではないかと考えてる。すなわち、オンプレミス、または量子クラウドサービスを提供するのではなく、チップや他の技術要素をコンポーネントとして提供し、OEMメーカーが完成した量子コンピュータを構築して販売したりクラウドに展開するのではないかと。いずれにせよ、Intel の戦略や全体的な量子エコシステムの発展は、時間が経つにつれて明らかになるだろう。


Tunnel Falls 発表に関する追加情報は、ニュースルームの記事 、およびビデオ を参照。ウィスコンシン大学マディソン校の関連ニュースリリース 、LPS Qubit Collaboratoryの関連ニュースリリース も確認してほしい。



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原記事(Quantum Computing Report)

https://quantumcomputingreport.com/


翻訳:Hideki Hayashi

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