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コラム:量子クラウドを避けたいなら

By Yuval Boger


量子クラウドを用いた量子ハードウェアの利用が好まれています。 2022年12月に行われたハイペリオンリサーチの調査によると、調査対象ユーザーの50%がクラウド経由で量子にアクセスし、さらに17%がオンプレミスとクラウドのハイブリッドアクセスを使用しているとの結果に。それでも21%はオンプレミスの利用を求めています。複数年にわたる重要なパートナーシップ契約が結ばれており、少数ながら量子コンピュータを現場に設置しています。


今日の量子ハードウェアは2年後にはほとんど時代遅れとなるでしょう。しかも量子コンピュータは高価であるため、オンプレミスの21%という数字は50%という数字よりも大きく感じられるかもしれません。クラウド上の量子コンピュータは、「Pay as you go(使った分だけ支払う)」という価格設定、特定のアプリケーションに最適なコンピュータを選択できる、複数のベンダーを試すことが可能、常に最新モデルにアクセスできる安心感など多くの利点があります。


クラウドを利用しない理由は無いように思えます。では、オンプレミスでの利用の動機は何でしょうか。


政府機関、防衛機関、製薬会社などでは、量子アルゴリズムの保護に多大な労力を費やしています。そのアルゴリズムを外部に送信することは、極めて安全な通信回線にもかかわらず、許容できないリスクであると判断されています。このリスクは、量子コンピュータサービスを提供するいくつかのクラウド事業者が、量子コンピュータを自らホストせず、ハードウェアベンダーの敷地内ホスティングに依存していることが大きな理由でしょう。


幾つかの大規模な研究センターでは、ジョブの実行速度を保証するために、オンプレミス型のソリューションが選択されています。クラウド上でアクセスできる量子コンピュータは数十台しかなく、アクセスはクラウドプロバイダーの稼働時間に制限され、実行はジョブキューに従わなければなりません。コンピュータを保有することで、稼働時間をコントロールし、他のユーザーと共有する必要がなく、より多くの量子帯域幅を確保し、社内の優先順位に基づいてジョブを管理することができます。


また、要件としてデータレジデンシーの問題で、データを国内に残すことを保証しなければならない組織もあります。また、組織の地理的条件もレイテンシーに影響を与えることもあるでしょう。例えば、パリとニューヨークの距離は約5,800kmなので、パリのユーザーがニューヨークの量子コンピュータにアクセスする場合、往復で約40ミリ秒の遅延が発生することになります。これは、VQEのような古典と量子のハイブリッドアルゴリズムで、アルゴリズムの一部を古典コンピュータで、もう一方を量子コンピュータで実行する場合に特に重要となります。


最後に、国や地域によっては、量子コンピュータをクラウド上で「リース」するのではなく、「購入」することが魅力的な場合があります。


ではどのような理由であれ、パブリッククラウド上の量子コンピュータにアクセスしたくない場合、組織にはどのような選択肢があるのでしょうか。


古典コンピュータと量子コンピュータを、物理的にデータセンターでホストしている国内のプロバイダーと提携する方法がありそうです。それなら、古典コンピュータと量子コンピュータが同じ場所に設置されているため、レイテンシーの要件に対処することができます。また、可用性と稼働時間の保証を交渉するオプションも提供されるでしょう。また、量子コンピュータの校正をホスティングセンターに委託し、量子コンピュータに必要な極低温冷却などの動作条件もホスティングセンターに依頼することも可能です。欠点としては、データがまだ顧客の壁の外にあることで、重要な信頼と検証可能なセーフガードを取り決める必要がある点です。


この点が妥協できない場合には、量子ベンダーからコンピュータの購入を交渉する際に、組織が気にするべきいくつかのポイントがあります。


  • アップグレード性。量子コンピュータは飛躍的に向上し続けている。携帯電話と違い、これらの改良は、カメラや新しい絵文字が多少改善されただけではありません。量子の改良には、量子ビット数、忠実度の向上、動的回路などの新機能が含まれており、いずれもコンピュータを量子の優位性に一歩近づけるものです。量子コンピュータを購入する組織は、継続的にアップグレードできるアーキテクチャと、顧客を最先端に維持する意思のあるベンダーを重視する必要があるでしょう。

  • 包括的なサポートとトレーニングサービス。このサービスは、キャリブレーションとメンテナンスだけに限定されるべきではありません。代わりに、労働力開発や統合およびカスタマイズサービスを含めることも可能です。量子コンピュータを購入することは、この地域を繁栄する量子ハブに変える機会になるでしょう。

  • 段階的アプローチ。量子コンピュータが 「在庫」 で納品できることはまずありません。ハイエンドの量子コンピュータを作るにはまだ数年かかるでしょう。その間、ユーザーに出来ることはなんでしょうか。ベンダーは、このスケジュールのギャップを埋めるための革新的なアプローチを考え出しました。


量子コンピュータは産業に革命を起こす可能性を秘めています。多くの組織は、クラウドアクセスの利便性を好みます。しかし、オンプレミスマシンを支持する声もあります。オンプレミスを選択する場合、量子パートナーを選択する際に、アップグレード可能性、サポート、および提供スケジュールを考慮することをお勧めします。


Yuval Bogerは、量子テクノロジーとビジネスの接点で活躍する経営者です。彼の「Superposition Guy's Podcast」は、Quantum Computing Reportのこちら や、ほとんどのオーディオプラットフォームで聞くことができます。連絡先は LinkedIn から。



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原記事(Quantum Computing Report)

https://quantumcomputingreport.com/


翻訳:Hideki Hayashi

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